ノートPCのメモリオンボード化はなぜ進む?LPDDR5XとDDR5の違い、LPCAMM2の将来までを解説
ノートPCを買おうとして、「メモリ16GB(オンボード/増設不可)」という表記で手が止まった人は多いと思います。
デスクトップPCなら後からメモリを足せるのに、なぜ最近の薄型ノートPCは増設できないモデルばかりなのか、私も最初はかなり違和感がありました。
結論から言うと、今の薄型ノートPCではメモリオンボード化がほぼ標準です。
理由はシンプルで、LPDDR5Xという低電圧メモリを基板に直接載せた方が、速く、省電力で、薄く作りやすいからです。
買う側が覚えておきたいのは、「あとから増設する」ではなく「最初から必要な容量を選ぶ」という考え方です。
一般用途でも16GBを最低ラインにして、AI処理や動画編集、仮想マシンを使うなら32GB以上を見ておくと安心です。
この記事はJEDEC、Intel、Micron、Crucialなどの公式情報と各社製品仕様をベースに、2026年5月時点でまとめています。
海外メディアや開発者コミュニティの技術解説も参照しつつ、PC初心者にも分かる言葉で整理します。

メモリオンボードは増設できない=デメリット
という印象がありますよね。
正直、メモリオンボード化はユーザーにとって不便な面もあります。
ただ、仕組みを知ると「メーカーが勝手に不便にした」というより、ノートPC全体の薄型化・長時間駆動・AI対応の流れの中で進んだ変化だと分かります。
ノートPCのメモリオンボード化はどこまで進んだか

2020年頃までは、ノートPCでもメモリスロットがあり、後から8GBから16GB、32GBへ増やせる機種が残っていました。
ところが2023年から2024年あたりを境に、薄型ビジネスノートやモバイルノートは一気にメモリ直付けへ移りました。
HPのOmniBook、Dell XPS、Lenovo ThinkPad X1、Apple MacBookなどの主力モデルを見ても、メモリをユーザーが差し替えられる機種はかなり少数派です。
各メーカーのラインナップを確認した範囲でも、オンボード以外の選択肢はゲーミング系の一部のモデルにあるのが多くなってきました。
海外メディアstarryhope.comでも、2026年時点でミニPCやノートPCのオンボードRAMが増えている流れが紹介されています。
薄型ノートでは、増設できないメモリが今の標準になりつつあります。
ゲーミングノートだけは例外として残りやすい
例外はゲーミングノートです。
HP OMENやVictus、ASUS ROG、Lenovo Legionの一部モデルは、2026年現在もDDR5 SODIMMスロットを残しています。
ゲーミングノートは本体が厚く、冷却や内部スペースに余裕を持たせやすい設計です。
ユーザー側にも「後から自分で増やしたい」という要望が強く、メーカーもそこを売りにしやすい分野です。
実は、薄型ノートとゲーミングノートではメモリの考え方がかなり違います。
薄型ノートは省電力と軽さを優先し、ゲーミングノートは性能と拡張性を残しやすい設計です。
メーカーがオンボード化を選ぶ3つの理由

ユーザーから見ると、メモリを後から増やせないのは不便です。
それでもメーカーがオンボード化を進める理由は、速さ、バッテリー、コストの3つです。
メーカー側にとっては、かなり合理的な選択です。
1. LPDDR5Xは速さで有利
LPDDR5Xは、基板に直接はんだ付けして使う前提で作られた低電圧メモリです。
CPUからメモリまでの距離を短くでき、データのやり取りがしやすくなります。
JEDEC規格のLPDDR5X-6400〜8533を128bitのデュアルチャネルで使うと、メモリ帯域は約102〜136GB/sまで伸びます。
一般的な差し替え式DDR5 SODIMM(4800〜5600MT/s・デュアルチャネル)は約77〜90GB/sなので、LPDDR5Xの方が約1.3〜1.7倍ゆとりがあります。
CPUとメモリの距離が短い分、データを呼び出す待ち時間も短くなります。
AI処理やゲームのフレーム生成のように、細かいデータを何度も読み書きする作業では、この差が反応の軽さにつながります。
2. 電圧が低く、バッテリーを伸ばしやすい
2つ目の理由は省電力です。
LPDDR5Xの動作電圧は1.05Vで、DDR5 SODIMMの1.1Vより少し低くなっています。
数字だけ見ると小さな差ですが、メモリはPCを使っている間ずっと動くパーツです。
実利用で30〜60分ほどバッテリー駆動が伸びる可能性があると言われています。
私自身も、レビューで同じ価格帯の薄型ノートを比べると、この差に近いバッテリー表記を何度も見ています。
13〜14インチクラスの軽量モバイルノートを「外で1日持つ」ことを売りにする以上、メーカーがLPDDR5Xを選ばない理由はもはやないというのが実感です。
3. 部品点数が減り、作りやすい
3つ目の理由はコストです。
Samsung、SK hynix、Micronなどの大手サプライヤーがLPDDR5Xを大量に作るようになり、チップ単体の調達がしやすくなりました。
SODIMMはチップだけでなく、基板、コネクタ、モジュール製造工程も必要です。
同じ容量なら、マザーボードに直接載せるLPDDR5Xの方が部品点数を減らしやすい構造です。
LPDDR5Xは帯域と消費電力の両面でSODIMMより有利だという声が多く見られます。
性能が上がり、バッテリーが伸び、作る側のコストも下げやすいなら、メーカーが選びやすいのは合理的な理由です。
LPDDR5XとDDR5 SODIMMの違いを数字で見る

ここで、LPDDR5XとDDR5 SODIMMの違いを表で整理します。
帯域の数値はJEDEC仕様のLPDDR5X(6400〜8533 MT/s)と、ノートPCで採用例が多いDDR5 SODIMM(4800〜5600 MT/s)の典型レンジを示しています。
| 項目 | LPDDR5X(オンボード) | DDR5 SODIMM(差し替え) |
| 動作電圧 | 1.05V | 1.1V |
| 帯域幅 | 約102〜136 GB/s | 約77〜90 GB/s |
| レイテンシ | 信号路が短く低レイテンシ | 標準 |
| 物理形態 | 基板に直接はんだ付け | モジュール差し替え可 |
| 増設・交換 | 不可 | 可能 |
| バッテリー駆動への影響 | 低電圧で総合的に長くなる傾向 | 標準 |
帯域幅はJEDEC仕様のデュアルチャネル(128bit)構成における計算値。
レイテンシとバッテリー駆動への影響は構造上の傾向を示す。
表にすると、LPDDR5Xは速さと省電力に強く、DDR5 SODIMMは交換できる自由度に強いことが分かります。
ユーザーは交換できるというメリットがなくなりますが、製品全体の性能はアップします。
メモリの容量でもパフォーマンスはアップするため、速さを求める場合に、容量か種類かで迷いそうです。
メモリ容量そのものの選び方は、ノートPCのメモリ容量の選び方でも別に整理しています。
今買うなら、メモリは最初から多めに選ぶ

仕組みが分かっても、買う側にとって「後から増やせない」という制約は残ります。
購入後に容量不足で困る人は、購入時にメモリを最低限まで絞っていることが多いです。
鉄則は、最初から少し多めに積むことです。
ここだけは、節約しすぎない方がいい部分です。
用途別の目安
2026年時点では、Windows 11自体のメモリ消費も増えているので、8GBは避けた方が安心です。用途別に見ると、目安は次のようになります。
- 16GB(最低ライン): Web、Office、動画視聴、レポート作成が中心の一般用途
- 32GB(推奨): 画像生成AI、動画編集、仮想マシン、Copilot+ PCのAI処理を使う人向け
- 64GB以上: 開発、大規模な仮想マシン、大型LLMをローカルで動かす人向け
実は、Copilot+ PCのオンデバイスAI処理はシステムメモリも使うので、16GBと32GBでは余裕が変わります。
HPの場合、Aero 13-bg、OmniBook 5 14-he、OmniBook Ultraなどで選べるメモリ容量の上限が違います。
具体的なHPのモデルマップは、HPノートPCの全シリーズマップで確認できます。
先に用途を決めてから、容量と機種を合わせる順番で見ると選びやすくなります。
さらに進んだ例:CPU内蔵メモリと業界の戻り

オンボード化の先に、メモリをCPUパッケージへ入れる方式も出てきました。
代表例が、2024年秋に登場したIntel Core Ultra 200Vシリーズです。
Core Ultra 7 258Vなどは、LPDDR5X-8533のメモリをCPUのすぐ近くにまとめています。
考え方としては、Apple Mシリーズに近い方式です。
あるメーカーの取材した製品企画の方も、CPUとメモリが近いほど設計がシンプルになり、性能面のメリットも大きいと話していました。
私自身、LPDDR5X搭載のThinkPadを初めて触ったとき、大容量ファイルのダウンロード中でも動きが軽くて驚きました。
ただし、Intel側には別の事情があります。
Lunar LakeのオンパッケージメモリはIntelにとって利益率を下げやすい構成でした。
OEM側は設計しやすくなりますが、Intel側はメモリ調達まで抱えるため、全体の利益構造が変わります。
後継となるIntel Core Ultra Series 3では、メモリはCPUから外れ、マザーボード直付けLPDDR5XやLPCAMM2対応へ戻る見込みです。
私の見方では、CPU内蔵メモリは便利でも、主流として広がるにはコスト面の壁が大きいです。
CPU選びの基本は、ノートPC向けCPUの選び方も合わせて見るとわかりやすいです。
次の希望:LPCAMM2という交換できるメモリ

ここまで読むと、「もう薄型ノートのメモリは一生増設できないのか」と感じるかもしれません。
ただ、業界は次の選択肢も用意し始めています。
それがLPCAMM2という、新しい薄型メモリモジュールです。
名前は難しいですが、考え方は「交換できるLPDDR5X」です。
LPCAMM2はオンボードとSODIMMの中間
LPCAMM2は、LPDDR5Xのチップを薄い基板にまとめ、圧縮コネクタでマザーボードに固定します。
ネジで止める形なので、設計次第ではユーザーや修理担当者が交換できます。
LPDDR5Xの低電圧と高い帯域を活かしながら、交換の余地も残せる点が魅力です。
昔のSODIMMほど自由ではないものの、完全なオンボード固定よりは少しカスタマイズの余地を残します。
LPCAMM2を次世代のRAMスティックとして紹介しているところもあります。オンボードか差し替え式か、という二択を崩す新しい形です。
普及は2027年以降が現実的
MicronやCrucialはLPCAMM2製品を発表し、Lenovoも法人向けThinkPadの一部で採用を始めています。
一方で、2026年5月時点では採用機種はまだ限られています。
個人向けの薄型ノートへ広く入るのは、2027年以降と見ておくのが現実的です。
正直、今すぐ必要な人がLPCAMM2だけを理由に買い替えを待つほどではありません。
どうしても増設の余地を残したいなら、現時点ではゲーミングノートかLPCAMM2採用の一部ThinkPadが現実的です。
法人モデル用のハイスペック仕様で、今すぐ買いたい個人の人には2026年5月の現在、モデルがない状況が現実です。
まとめ:今買う人の判断軸

ノートPCのメモリオンボード化は、メーカーの都合だけで進んでいる話ではありません。
LPDDR5Xを直付けにすると、速さ、省電力、薄型化、コストの面でメリットがあります。
一方で、ユーザーは後から増設する自由を失います。ここが、今のノートPC選びでいちばん大事な割り切りです。
私が今買うなら、次の3つを基準にします。
- 一般用途でも16GBを最低ラインにする
- AI処理、動画編集、仮想マシンを使うなら32GB以上を選ぶ
- LPCAMM2を待つかどうかは、2027年以降の買い替え予定で決める
迷ったけど少ない容量にする、という選び方は後悔につながりやすいです。今の薄型ノートは、あとから直すより、最初に決めるPCです。
具体的なHP機種で迷う場合は、HPノートパソコンおすすめ記事にシリーズ別の階層マップと用途別の選び方を整理しています。容量の目安と機種マップを合わせて見ると、自分の使い方に合う1台を選びやすくなります。